最初に滞在したホテルの旅行代理店に、ポアス火山国立公園(Parque Nacional Volcán Poás)とラ・パス滝公園(las cataratas La Paz)へ行く日帰りツアーを申し込んだ。予約日の朝、ドライバー兼ガイドのマリオさんが迎えにきてくれた。妻と筆者2人だけのツアーだった。
ポアス火山国立公園(Parque nacional Volcán Poás)は、中央火山山系(Cordillera volcánica central)自然保護区(Área de conservación)に含まれる4つの国立公園のうちの1つである。
サンホセのホテルを朝8時頃出発し、1時間半ほどでポアス火山国立公園の入口に着いた。途中の道路と駐車場は舗装され整備されている。駐車場で車を降りて、あとは歩いて見学する。入園料はツアー代金に含まれていたので我々が支払う必要はなかったが1人6ドルだったようである。駐車場脇のビジターセンター(Centro de visitantes)2階のカフェテリアで、ツアー代金に入っているという朝食をマリオさんと共にとった。筆者はコーヒー、妻がホットチョコレートを飲み、キッシュで腹ごしらえをしてから歩き出した。
ポアス火山(Volcán Poás)は、標高2708mの成層火山(estratovolcán)で、活火山である(1)。頂上付近に火口湖があり、それらを見学する。30分ほど舗装された歩行者用の道を歩いて、ポアス主火口湖(cráter principal el Poás)を見下ろす展望台に着いた。周りが土色でごつごつした地面の中にエメラルド色(トルコ藍色)の湖がある。直径(diámetro)1320m、深さ(profundidad)300mとの看板がある。
ポアス主火口湖
コスタリカは、国土のおよそ20%が、国立公園(Parques Nacionales)および自然保護区(Área de conservación)に指定されていて、自然や生態系の保護が国によって図られている。領海のうち、鯨が見られる領域も国立公園とされているところがある。自然保護に努め、これらの国立公園を主な対象としたエコツーリズム(Turismo ecológico, ecoturismo)で外国人観光客を招きいれることで、コスタリカの大きな外貨収入源となっているようである。
ポアス火山国立公園からラ・パス滝公園へ行く途中の景色
ポアス火山の見学の後、ラ・パス滝公園へ行く。遠くには、緑の山々が見え、カーブが続く坂道を行く。途中では良い天気だったのに、滝公園に着いたころには雨が降り出した。入口の建物を通り、茂みの中の道を進む。道の途中、「蝶の観察館」(observatorio de mariposas)がある。大きな籠の中で、いろいろな蝶が、自由に飛び回ったり、餌台にとまったりしている。見物客はその籠の中に入って歩いて進む。ただ、はねをひろげたまま餌台にとまっている茶色を基調とした模様のあるものを見ると、我々には蝶ではなく、蛾と思われる種類もいる。昆虫学からは蝶と蛾は同じチョウ(鱗翅)目(lepidópteros)に属し、厳密に区別できないそうで、また、日本語では蝶と蛾が別の語であるが、スペイン語mariposaは両者を区別しないから(2)から、もっともなことではある。
絵とともに学名を示した看板が設置してあった。
フクロウチョウ(Caligo eurilochus "El Buho") 羽にフクロウのような大きな眼の模様があり、天敵の小鳥を威嚇する。
1番上には Morpho peleides の表面と裏面の2つの絵/写真と Caligo eurilochus (フクロウチョウ)の同じく表面と裏面の2つの絵である。それより下は1種づつ絵に学名が添えてある。
「ハチドリの庭」(jardín de colibríes)では、いくつかの種類のハチドリが飛んだり、餌台にとまっているのを観察することができる。
他に、蘭の庭(jardín de orquídeas 英語ではOrchid Houses 蘭の家)という施設もあり、いろいろな種類の蘭を見ることができる。この公園は、手軽にコスタリカの自然に触れることができるように整えられている施設である。
滝は、上流から、Catarata El Templo (寺院滝)、最大のCatarata Magia Blanca (白魔術滝)、Catarata Encantada (魅惑滝)、Catarata Escondida (隠れ滝)、catarata La Paz (平和滝)の5本が密林の中にある。順番に見ていくように柵がある遊歩道、展望台が作られている。
遊歩道をさらに少し進み、シャトルバスでピックアップしてもらい、昼食のレストランへ向かう。昼食は、密林を眺望することができるテラスのあるレストランでのビュッフェだった。最初は、室内から景色やテラスを見ながら食事し、後でテラスでお茶を飲んだ。景色を見ながら食事をするのが好きな妻はこの時のテラスから眺めた景色が、遠くの密林や緑いっぱいの谷を見下ろすことができ、景色の広がり、スケール、雄大さ、美しさで、今までのベストだったと言っている。
筆者は、学会行事のため、あまりあちこちを見学する時間がとれなかった。筆者が学会に出ている間に、妻は、サン・ホセ市の国立劇場(Teatro Nacional)、画廊(galería)、動物園(Parque zoológico Simón Bolívar)、黄金博物館(Museo de oro y Numismática)などを見た。そしてサン・ホセ市から南西へ約24kmの町、カルタゴ市(Cartago)へ路線バスで出かけている。1563年に設立されたカルタゴ市は、コスタリカの中で現存の最も古い都市で、植民地時代には多くのスペイン人支配層が住んでいた町である。ここでは、マヨール広場(Plaza Mayor)など、市内を歩いて散策した。広場に立つコンクリート製の高い円錐形のオベリスク(Obelisco)や司令部だった建物(Comandancia de Cartago 2010年からは市立博物館 Museo Municipal de Cartago)なども見た。市の守護聖母、黒いマリア様(la Negrita)が祀られている「天使の聖母バシリカ聖堂」(Basílica de Nuestra Señora de los Ángeles)、建設途中に地震で放置され、後に公園として整備された「使徒サンティアゴ教区教会の廃墟」(Ruinas de Santiago Apóstol), 市場(mercado)などには入った。昼食は中華料理店で軽く食べた。店の人はすべて中国人で妻は中国語で話しかけられたそうである。市場で売られていた海亀の卵(3)(huevos de tortuga lora)、イカのセビーチェ(cebiche)、アボガドなどを買ってきた。海亀の卵は、生のまま殻を破ってピリ辛ソース(salsa picante)をかけて食べるとの説明を受け、サービスのソースをもらってきた。海亀の卵3個とソースで100コロン(colón 空港での両替で1ドル346コロン)だった。ホテル近くのスーパーマーケットで買ったパンやビールなどと共に、その日の夕食として2人でホテルの部屋で食べた。海亀の卵は生臭く、おいしく食べたというよりは、人生の(最初で最後の)経験として食べたものである。
天使の聖母バシリカ聖堂 コスタリカで最も重要な聖堂の1つ。伝説ではある農婦(campesina)が岩の上にマリア様が現われたのを見てそこに最初の聖堂が建てられた。1926年の大地震で破壊されたため1929年にビザンチン様式(estilo bizantino)で再建された。毎年8月2日にカルタゴ最大の祭りとして聖母を讃える巡礼祭(romería)が行われる。
使徒サンティアゴ教区教会の廃墟 建築途中の1910年5月4日に地震がおきて、建設が放棄されたもの。
最終日、ホテルからタクシーで空港へ向かい、アメリカ合衆国のダラス経由での帰路についた。帰りは日本への乗り継ぎ便の都合で、ダラスで1泊する必要があった。ただホテルは日本からネット予約しておいたのだが、距離感がまったくわからず選んでしまって、空港から、また市内からもかなり遠く、ダラス空港からホテルまでタクシーで53ドル、ホテルから空港までは60ドルもかかった。ホテルに適当なレストランがなく、郊外だったので、夕食を食べるのに、車がビュンビュン走る広い道路を、命がけで横断してレストランに行き来するはめになった。ウエイターの南部なまりの英語が聞き取れず苦労した。同じくダラス経由で日本へ帰った学会仲間は、空港からシャトルバスでの送迎付きのホテルをネット予約したそうで、次回からはそうすべきかと反省し、教訓とした。