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『スペイン語文法項目別ドリル問題集』解説
堀田英夫

第4章 文


p. 50

4-1 [疑問文、疑問詞]


(1) Sí か no で答える疑問文の場合は、イントネーションを疑問調(文末で上げる)にするのと文頭にさかさまの疑問符 ¿ 文末に英語と同じ ? を付けるのが義務的で、普通主語と動詞の語順をひっくり返す。
(2) 答える時、肯定文を答える時は、いつも sí、否定文を答える時はいつも no を言う。だから否定疑問文の答えでの sí、no の日本語訳は逆になる。
- ¿Luis no habla español? ルイスはスペイン語を話さないのですか。
   - Sí, habla español. いいえ、スペイン語を話します。
   - No, no habla español. はい、スペイン語を話しません。
(3) 疑問詞を使う疑問文では、疑問詞を文頭に置き、主語と動詞の語順をひっくり返すのが普通。
¿Qué leen ellos? 彼らは何を読んでいるのですか。
¿Dónde vives tú? 君はどこに住んでいるのか。
(4) 疑問詞には、いつもアクセント符号がつく。
 qué(何)、dónde(どこ)、cuándo(いつ)、cómo(どのように)
数変化するもの: quién, quiénes(誰) cuál, cuáles(どれ)
性数変化するもの: cuánto, -ta, -tos, -tas(いくつ、どれだけ)
(5) 前置詞と共に用いられることがある。
 por qué(なぜ)、en qué(なにで)、 de dónde(どこから、どこ出身)、a dónde(どこへ. これには adónde と1語になった語形もある), a qué hora (何時に)、a quién(誰を、誰に) ...

p.52-p.53

4-2 [否定文、否定語、不定語]


[1] 否定文
 否定文は、動詞の前に no を付ける
 Luis no habla español. ルイスはスペイン語を話さない。

[2] 否定語と不定語
人・物
否定語 nada 何も~ない nadie 誰も~ない ninguno,-na,-nos,-nas
 誰も・何も~ない
不定語 algo 何か alguien 誰か alguno,-na,-nos,-nas
 誰か、何人かの人、いくつか
(1)否定語は、否定文の中で、不定語は肯定文の中で使う。
No hay nada en la caja. その箱には何もない。
Hay algo en la caja. その箱には何かがある。
(2)否定語が動詞の前に来たときは、強い否定の意味で no が不要になる。
No sabe nadie la verdad. => Nadie sabe la verdad. 誰も真実を知らない
(3)すべて代名詞として使われ、algo(いくらか)、nada(まったく~ない)は副詞としても使われ、alguno, -na, -nos, -nas, algún(男性単数名詞の前)と ninguno, -na, ningún(男性単数名詞の前)は、形容詞としても使う。algo, nada, alguien, nadie は語形変化しない。
Está algo nerviosa ahora. 彼女は今少し神経質になっています。
No tenemos ningún problema. 私たちは一つも(まったく)問題がない。
(4) algo, alguien に対して、alguno, -na, -nos, -nas は、「~のうちの誰か、何か」と範囲が意識されている。nada, nadie に対する ninguno, -na も同様。
No se podrá impedir al pueblo el goce de ninguno de los derechos humanos fundamentales. (日本国憲法11条)国民は、すべての基本的人権の享有(きょうゆう)を妨げられない。(人々は基本的人権のどの1つの享受も妨げられない)
(5) alguien, nadie が直接目的語のとき、前置詞 a が必要。
¿En qué se fija para poder contratar a alguien y unirlo a su equipo? あなたの(仕事のための)チームに加えるために誰かを(労働)契約する(できる)ためには何(どんなこと)に注目しますか。
(6) alguno, -na が名詞の後で使われる時は強い否定となり、否定文で使われる。
No tenemos comida alguna en casa. 私たちは家にまったく食べ物がない。

p.54-p.55

4-3 [関係代名詞]


関係代名詞
(1) 関係代名詞は、二つの文を結びつけ、一つにする働きをする。
関係代名詞 que は人にも物にも使われる。
 El señor es el padre de Luis. + El señor está allí.
これら二つの文を el señor という共通の語を軸として一つの文にするのが関係代名詞。二つ目の文の el señor を関係代名詞 que に置き換えて(que está allí)、文全体を一つ目の文の el señor(これを先行詞と言う)の後に入れ込むと、
 El señor que está allí es el padre de Luis.
という文になる。
(2) que は、先行詞は人、物、ことのどれでもよく、最もよく使われる関係代名詞であるが、a, con, de, en以外の前置詞を前に伴う時は、次の関係代名詞を使う。
 quien (quienes) : 先行詞は人、それに数を合わせる、前置詞を伴う時か、コンマの後で使う。
 el que (la que, los que, las que; lo que) : 先行詞は人、物、こと、それに性数一致させる。口語的。前置詞を伴う時か、コンマの後で使う。
 el cual (la cual, los cuales, las cuales; lo cual) : 先行詞は人、物、こと、それに性数一致させる。文語的。前置詞を伴う時か、コンマの後で使う。

関係形容詞
 cuyo (cuya, cuyos, cuyas) : 所有を表す。後ろにくる所有される名詞の性数に一致させる。
 cuanto (cuanta, cuantos, cuantas) : 数量について「全部の」を表す。後ろにくる所有される名詞の性数に一致させる。
En un lugar de la Mancha, de cuyo nombre no quiero acordarme, no ha mucho tiempo que vivía un hidalgo. ラ・マンチャのある所に、その(所の)名は思い出したくないが、さほど昔でもない頃、1人の郷士(ごうし)が住んでいた。(『ドン・キホーテ』1605年. 冒頭)。acordarse de ~ を思い出す。no ha mucho tiempo que は、現代語なら no hace mucho tiempo que の語形である。

関係副詞
 donde : en que と置き換えられる。
 como : 先行詞は modo や manera などの方法を表す語。

p.56-57

4-4[命令文]


(1) Usted, ustedesに対する命令形「~してください」
 接続法現在3人称の動詞形を用いる。usted, ustedes は普通、動詞の後にくる。
 Oiga usted, por favor. すみませんが(聞いて下さい)。
 Pasen ustedes. (どうぞ)お通り下さい。
(2) 命令文での間接目的格「~に」、直接目的格「~を」の人称代名詞の位置
1) 肯定命令: 動詞の後に、間接目的格「~に」、直接目的格「~を」の順にくっつける。
 Hágalo. それをして下さい。
 Dígaselo. 彼(女)(ら)にそれを言って下さい。
2) 否定命令: no+間接目的格「~に」+直接目的格「~を」+動詞の順に置く。
 No lo haga. それをしないで下さい。
 No se lo diga. 彼(女)(ら)にそれを言わないで下さい。
(3) tú, vosotros に対する命令形「~して」
1) 肯定命令では、tú に対して、直説法現在3人称単数の動詞形を、
 vosotros/-as には、不定詞の -r を -d にした動詞形を使う。
2) 否定命令には、tú に、接続法現在2人称単数の動詞形を、
 vosotros/-as に、接続法現在2人称複数動詞形を使う。
3) 目的格代名詞の位置は、usted, ustedes への命令と同じ。肯定命令では動詞の後につけ、否定命令では no と動詞の間に置く。
(4) tú に対する肯定命令が不規則形の動詞が少しある。否定命令は接続法現在2人称単数形なので規則的。
poner(置く): pon, tener(持っている): ten, venir(来る): ven, salir(出る): sal, hacer(する): haz, ser (~である): sé, decir(言う): di, ir(行く): ve, valer(役立つ)は、規則形、不規則形の val と両方が使われている。
(5) 中南米では、vosotros が使われないので、その命令形も使われず、代わりに ustedes の命令形を使う。

p.58-p.59

4-5 [比較]


(1) más + ~(形容詞/副詞) + que + --- = 「---よりも~」
Este castillo es más alto que aquella torre. この城はあの塔より高い。
(2) tan + ~(形容詞/副詞) + como + --- = 「---と同じくらい~」
Este castillo es tan alto como aquella torre. この城はあの塔と同じくらい高い。
(3) el + (名詞) + más +~(形容詞) + de --- = 「---の中で最も~」
Este castillo es el más antiguo de todo el país. この城は国中で最も古い。
(4) 不規則形: 「más+形容詞/副詞」の部分が一つの語形を持った形容詞、副詞がある:
 原級    mucho  poco  grande  pequeño  bueno, bien  malo, mal 
 比較級  más menos  mayor menor mejor peor

1) grande, pequeño の比較の形は、抽象的な大きさ、年齢を比較するばあい: mayor, menor、形状の大きさを比較する場合: más grande, más pequeño を主に使う。
2) bueno の比較は、mejor の他に、道徳的善さを比較する場合、más bueno も使う。
3) más, menos は、性数変化しない(単複同形)。これ以外の形容詞は、不規則な比較形でも名詞の数に一致させる数変化(複数形)がある。
 mayor : mayores, menor : menores, mejor : mojores, peor : peores
(5) 「tan + mucho」の結びつきには tanto (形容詞、副詞)という語形を使う。
1) tantoが形容詞の場合、名詞の性数に一致させる性数変化がある。
 tanto : tantos : tanta : tantas

次の格言の意味を考えてみよう。
Más vale tarde que nunca.
vale = valer(価値がある)の直説法現在3人称単数形、tarde(遅く)と nunca(決して~しない)を比較している。そのどちらにも「何かをする」が含意されている。
No hay libro tan malo que no tenga algo bueno.
(『ドン・キホーテ 後編』1615年. 第3章) tenga = tener(持っている)の接続法現在3人称単数形。まず、No hay libro que no tenga algo bueno. で意味を考える。それに tan malo(そんなにも悪い)を libro に付け加えると良い。tan はこの場合、比較の対象は表現されておらず「こんなに・そんなに」の意味。

p.60

4-6 [感嘆文、絶対最上級(-ísimo)、示小辞(-ito)]


[1] 感嘆文
(1) 名詞、形容詞、副詞の前に疑問詞 qué をつけ、文の前に、逆さまの感嘆符¡と後ろに普通の感嘆符!をつけ、イントネーションを変えると感嘆文になる。「何て~なんだろう」
 ¡Qué alegría!  ¡Qué hermoso!  ¡Qué bien!
(2) 形容詞+名詞がある文を感嘆文にするには、
 ¡Qué 名詞 más 形容詞 ...! または、
 ¡Qué 名詞 tan 形容詞 ...! の形にする。

[2] 絶対最上級(-ísimo)「とても~」
(1) 形容詞の語末母音を取り除き、-ísimoを付ける。語尾の-oは、修飾する名詞の性数に一致させる。
 mucho => muchísimo 「とても多くの、大いに」
(2) 綴り字上注意すべき語がある:
 rico => riquísimo 「大変おいしい、大金持ちの」
 largo => larguísimo 「非常に長い」
 feliz => felicísimo 「とても幸せな」
(3) 語形が少し変わる語がある:
 amable => amabilísimo 「大変親切な」
 antiguo => antiquísimo 「非常に古い」
 bueno => buenísimo, bonísimoも。「とても良い」

[3] 示小辞(-ito)
名詞に付けて、小さいもの、親愛の情を示す。一部の形容詞や副詞などにも付く。
1) 語末母音の前につける: gato => gatito 「子猫、猫ちゃん」
2) そのままつける: Juan => Juanito 「フアン君」
3) ciのような要素が入る: pobre => pobrecito「とてもかわいそうな」
4) -ito の他に -illo などがある: pan => panecillo 「プチパン、小型のフランスパン」
5) 綴り字上注意するものがある: poco => poquito 「ほんの少し」

p.62-p.63

4-7 [条件文]


条件文 「もし~なら...するだろう」「もし~なら...するのに」
(1) 現実的条件文。実現の可能性のあること、完全に実現不可能と思っていない未来のこと、過去のことであり得た条件を表現する。
Si ... 直説法の時制(未来形は不可) ... , ... 直説法の時制 ...
 Si tenemos tiempo mañana, iremos de excursión. もし明日時間があったら遠足に出かけるだろう。
(2) 非現実的条件文。実現の可能性がまったくないと思っていることを表現する。
1) 現在・未来の非現実的条件文
 Si ... 接続法過去 ... , ... 過去未来形 ...
 Si tuvieras tiempo ahora, saldríamos de viaje juntos. もし今君に時間があったら、一緒に旅行に行くのに。
2) 過去の事実に反する条件文
 Si ... 接続法過去完了 ... , ... 過去未来完了形(または接続法過去完了-ra形)...
 Si hubieran trabajado mucho entonces, habrían comprado esta casa. もし当時彼らが大いに働いていたのなら、この家を買っていたのに。


2020/9/2. © 2020 HOTTA Hideo