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『スペイン語文法項目別ドリル問題集』解説 
堀田英夫 

第3章(2) 動詞


p.28-p.29

3-7 [直説法点過去規則変化]

●「点過去」と呼ぶのは、「線過去」と区別するため。
● 過去のある時点でしたこと、起きたことを表現する時制。
● 不定詞の語尾-ar か、-er/-ir かによって語尾変化が違う。

-ar動詞: visitarの点過去
単数複数
1人称  visité    visitamos
2人称  visitaste    visitasteis  
3人称  visitó  visitaron
     -er/-ir動詞: comerの点過去
単数複数
1人称  comí      comimos 
2人称  comiste    comisteis  
3人称  comió  comieron

現在形では不規則であった動詞でも、点過去形では規則変化をするものが多くある。
● 動詞 encontrar(見つける), llover(雨が降る), resolver(解決する), volver(戻る) の現在形は、o が ue に変化するが、点過去は規則変化。
● 動詞 cerrar(閉じる), entender(理解する), pensar(思う), perder(失う) の現在形は、e が ie に変化するが、点過去は規則変化。
● 動詞 conocer(知っている), ver(見る) の現在形は1人称単数が不規則だが、点過去は規則変化。ただしverはアクセント符号がいらない: vi, viste, vio, vimos, visteis, vieron.

逆の、現在形は規則で点過去で不規則の動詞は andar(歩く)ぐらい。

andar の直説法現在(規則変化)    andar の点過去(不規則変化)
単数複数 単数複数
1人称  ando  andamos 1人称   anduve  anduvimos 
2人称  andas  andáis 2人称   anduviste  anduvisteis
3人称  anda  andan 3人称   anduvo  anduvieron

発音上は規則変化だが、綴り字上注意する動詞がある。
● /ke/[ケ]という発音は、que という綴り字で表すことから:
 sacar(引き出す) => saqué
● /ge/[ゲ]という発音は、gue という綴り字で表すことから:
 jugar(遊ぶ) => jugué
● ze という綴り字は伝統的には使わず、代わりに ce で表すことから:
 empezar(始まる) => empecé
● 母音間の i は、y で表すことから:
 leer(読む)の点過去形は、leí, leíste, leyó, leímos, leísteis, leyeron.


p.20 [IV](3)

 その日の朝食ならスペインの表現は現在完了で ¿Qué has comido en el desayuno? となる。中南米なら点過去で ¿Qué comiste en el desayuno? である。
 大豆がスペイン、アルゼンチン等では soja、メキシコ、ペルー、コロンビア等で soya なので、味噌が pasta de soja fermentada / pasta de soya fermentada と地域差がある


p.30

3-8 [直説法点過去不規則、語根母音変化]


不規則変化動詞
 不規則でもいくつか型があり、仲間の動詞がある。
● andar(歩く): anduve, anduviste, anduvo, anduvimos, anduvisteis, anduvieron.
● estar(状態、所在): estuve, estuviste, estuvo, estuvimos, estuvisteis, estuvieron.
● tener(持っている): tuve, tuviste, tuvo, tuvimos, tuvisteis, tuvieron.
● haber(ある、いる): -, -, hubo, -, -, (hubieron 接続法過去形を導くため必要).
● (haber(完了の助動詞): hube, hubiste, hubo, hubimos, hubisteis, hubieron.
  現代語では使われないが、過去分詞が後ろに付き「直前過去」を作る)

● querer(欲する): quise, quisiste, quiso, quisimos, quisisteis, quisieron.
● poner(置く): puse, pusiste, puso, pusimos, pusisteis, pusieron;
● hacer(する、作る): hice, hiciste, hizo, hicimos, hicisteis, hicieron.
estar の点過去
単数複数
1人称  estuve  estuvimos 
2人称  estuviste    estuvisteis  
3人称  estuvo  estuvieron
     querer の点過去
単数複数
1人称  quise  quisimos
2人称  quisiste    quisisteis  
3人称  quiso  quisieron

● venir(来る): vine, viniste, vino, vinimos, vinisteis, vinieron;
● saber(知っている): supe, supiste, supo, supimos, supisteis, supieron;

● decir(言う): dije, dijiste, dijo, dijimos, dijisteis, dijeron.
● traer(持ってくる): traje, trajiste, trajo, trajimos, trajisteis, trajeron.
● producir(生産する): produje, produjiste, produjo, produjimos, produjisteis, produjeron.
● reducir(減らす): reduje, redujiste, redujo, redujimos, redujisteis, redujeron.
3人称複数の語尾が *-jieron ではなく、-jeron であることに注意。
venir の点過去
単数複数
1人称  vine  vinimos 
2人称  viniste  vinisteis
3人称  vino  vinieron
     decir の点過去
単数複数
1人称  dije  dijimos
2人称  dijiste  dijisteis
3人称  dijo  dijeron

● ser(~である), ir(行く): fui, fuiste, fue, fuimos, fuisteis, fueron.
● dar(与える): di, diste, dio, dimos, disteis, dieron.
ser / ir の点過去
単数複数
1人称  fui  fuimos 
2人称  fuiste    fuisteis  
3人称  fue  fueron
     dar の点過去
単数複数
1人称  di  dimos
2人称  diste    disteis  
3人称  dio  dieron

語幹母音変化動詞
sentir の点過去
単数複数
1人称  sentí  sentimos
2人称  sentiste  sentisteis
3人称  sintió  sintieron
     dormir の点過去
単数複数
1人称  dormí  dormimos 
2人称  doriste  dormsteis
3人称  durmió  durmieron
● 語幹の e が3人称の活用形で i となる。
sentir(感じる): sentí, sentiste, sintió, sentimos, sentistes, sintieron.
reír(笑う): reí, reíste, rio, reímos, reísteis, rieron.
convertir(se [en -]に変わる): convertí, convertiste, convirtió, convertimos, convertisteis, convirtieron.
他に pedir(頼む), seguir(続ける), preferir(より好む), divertir(se 楽しむ) がある。
● 語幹の o が3人称の活用形で u となる。
dormir(眠る): dormí, dormiste, durmió, dormimos, dormisteis, durmieron.
他に morir(死ぬ) がある。

p.32

3-9 [直説法線過去]

「線過去」と呼ぶのは、「点過去」と区別するため。
過去における継続、反復、習慣を表す時制。時制の一致にも使う。
不定詞の語尾-ar か、-er/-ir かによって語尾変化が違う。

-ar動詞: hablarの線過去
単数複数
1人称  hablaba   hablábamos  
2人称  hablabas     hablabais  
3人称  hablaba   hablaba
     -er/-ir動詞: comerの線過去
単数複数
1人称  comía   comíamos  
2人称  comías     comíais  
3人称  comía   comían
● -ar 動詞
viajar(旅行する): viajaba, viajabas, viajaba, viajábamos, viajabais, viajaban.
● -er/-ir 動詞
tener(持っている): tenía, tenías, tenía, teníamos, teníais, tenían.
● 不規則変化は、ver(見る), ser(~である), ir(行く) のみ。
ver: veía, veías, veía, veíamos, veíais, veían.
ser: era, eras, era, éramos, erais, eran.
ir: iba, ibas, iba, íbamos, ibais, iban.

過去における継続、反復、習慣を表す時制。
 Cuando salí de casa, llovía. 家を出たとき、雨が降っていた。
 De joven viajábamos mucho. 若かった時、私たちはよく旅行したものだ。
時制の一致にも使う。
 Dicen que no pueden venir. 彼らは来られないと言っている。
=> Dijeron que no podían venir. 彼らは来られないと言った。


p.34

3-10 [点過去と線過去]

点過去は、過去のある時点でしたこと、起きたことを表現する時制。
線過去は、過去における継続、反復、習慣を表す時制。
すなわち、過去のある動作、状態について、それが終わったものと意識して表現する時は、点過去を使い、それが継続していたことを意識して表現する時は、線過去を使う。

点過去は、現在の時点から過去を振り返って表現するのに対し、線過去は、過去のある時点に意識を戻し、そこからその時点で起きている動作や状態を見つめて表現する。従ってそれがいつ終わるか(いつ始まったか)については関心がない。

hasta las cinco de la tarde(午後5時まで)といった終了時間や cinco horas(5時間)のような継続時間(すなわち始まり終わりの時間がはっきりしている)の表現がある文では点過去、
cuando ~(~の時)のような過去のある時点が表されている場合や、todas las semanas(毎週)のような継続的な時間が表されている文では線過去を使う。


p.36

3-11 [現在分詞、現在進行形]

現在分詞 規則形
 -ar動詞と-er/-ir動詞とでそれぞれ-ando, -iendo の語尾にする。
preguntar(質問する): preguntando, correr(走る): corriendo
現在分詞 不規則形
● 点過去で語幹母音変化する動詞
dormir(眠る): durmiendo, pedir(頼む): pidiendo, reír(笑う): riendo
● その他の不規則形
venir(来る): viniendo, decir(言う): diciendo
● 綴り字上注意する語形
ir(行く): yendo

現在分詞は、副詞としても用いられる。「~しながら」
現在進行形(estar + 現在分詞)は、今現在進行している行為を表現する。現在形でも「~している」と現在進行している行為を表現するが、estar + 現在分詞は、「今まさに~しつつある」 というような進行状態を強調した表現である。

他の動詞とも組み合わせて使われる。
● seguir + 現在分詞: ~し続ける
● ir + 現在分詞: ~して行く、~しながら行く
● pasar + 現在分詞: ~して過ごす、~しながら過ごす

【3-11. 補足問題】2. (9) cantar の現在分詞を書く問題。
この文は、メキシコの un «himno no oficial mexicano»(非公式国歌)といわれるほど、メキシコ国民を象徴する歌Cielito lindo「シェリート・リンド」(可愛いお空ちゃん) の一節。
“Canta y no llores, porque cantando se alegran los corazones.” 「歌いなさい、泣かないで、歌えば(歌いながら)心が楽しくなるから。」
 メキシコ人Quirino Fidelino Mendoza(1862- 1957)により1882年に作られ以後、国内外に普及した。歌詞のいくつかの部分は、スペインの民謡起源であることが指摘されている。

p.38

3-12 [過去分詞、現在完了]

過去分詞
● -ar動詞は、-ado、-er/-ir動詞は、-ido の語尾にするのが規則形
terminar(終える): terminado, aprender(習う): aprendido
● 不規則形
escribir(書く): escrito, ver(見る): visto, abrir(開く): abierto, hacer(する、作る): hecho,など。
● 過去分詞は、形容詞としても使われる。「~された」
 形容詞として使われる場合は、-o で終わる形容詞として関係する名詞の性・数に一致した語尾変化をする。

現在完了 「~した/~したことがある」 haber + 過去分詞

1) 助動詞 haber を主語に人称・数を一致させる。過去分詞の部分は語形変化しない。haber と過去分詞は順序が固定されていて、かつ間に別の語は入れない。
2) 発話時点(現在)との関係を意識して過去の行為を表現する。
完了、過去からの継続(現在時では終わっている場合も)、経験を表す。


現在完了と点過去
 発話時点(現在)との関係を意識して表現しているのが現在完了、既に終わったことと意識して表現するのが点過去。

 スペインでは、hoy(今日), esta semana(今週), este mes(今月), este año(今年)など、発話時を含む時間表現があれば(意識されていれば)現在完了で表現する。中南米では、これらの時間表現があっても(意識されていても)終わったことであれば現在完了でなく、点過去を使う。
 したがって、No desayuné. という発話は、スペインの言い方なら昨日(以前)の朝食のことを言う。中南米の言い方では、朝食時間が過ぎてしまった時の発話で、今日の朝食のことを意味することができる。
スペイン: No desayuné ayer.(昨日は朝食を食べていない)、 No he desayunado hoy.(今日は朝食を食べていない)
中南米: No desayuné ayer.(昨日は朝食を食べていない)、No desayuné hoy.(今日は朝食を食べていない)

助動詞 haber の直説法現在
単数複数
1人称  he     hemos 
2人称  has  habéis
3人称  ha  han

p.38 [III] (1) ガリシア風タコ el pulpo a la gallega
el pulpo a la gallega (C) 2017 Setsuko H.
[©️2017 Setsuko H.]


p.39 [3-12][2] 次の格言の意味を考えてみよう。
Quien no ha visto Sevilla, no ha visto maravilla.
quien ~する/した人
 他に Quien no ha visto Granada, no ha visto nada. Quien no ha visto Barcelona, no ha visto cosa bona[buena]. など、それぞれの町のすばらしさを称える言い方がある。Sevilla と maravilla、Granada と nada(アンダルシア方言形の na とする言い方もある)、Barcelona と bona(カタルーニャ語形)のようにいずれも韻を踏んでいる。
Del dicho al hecho hay gran trecho.
dicho は decir の過去分詞で定冠詞がついて「言われること」、hecho は hacer の過去分詞で同じく定冠詞がついて「なされること」の意味の名詞として使っている。de ~ 「~から」、a ~ 「~へ」、gran 大きな(grande の単数名詞の前の形)、trecho 隔たり、「私に責任がある」と言いながら責任をとらないような人のことを言う。

2020/7/31. © 2020 HOTTA Hideo

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