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『スペイン語文法項目別ドリル問題集』解説 
堀田英夫 

第3章(1) 動詞


p.16-p.17

3-1 [直説法現在規則変化]

 主語が、話し手の1人称単数「私」、話し相手の2人称「あなた」、第3者の3人称単数「彼(女)」のうちどれかによって、英語の be動詞が am, are, isと変わるように、ヨーロッパの言語の多くは、主語によって動詞の語尾変化がある。英語の一般動詞もかつては同じように語尾変化があったが、歴史的変化により、3人称単数のみ -s が付いた形として残った。
 スペイン語でも主語の人称・数や、時制・法によって動詞の語尾変化がある。時制は、過去、現在、未来などの区別のこと。法とは、ものごとの表現方法の違いを示す文法範疇で、スペイン語には直説法、接続法、命令法の3つの法がある。一つの時制・法につき、1、2、3人称と単数、複数の合計6つが基本となる。
直説法現在は、「~している」とか「~する」と訳し、現在の行為・習慣、確実な未来の予定などを意味する。
 不定詞(英語学習で言う原形のこと、辞書の見出しとなっている)の語尾で分類できる3種類: -ar動詞、-er動詞、-ir動詞でそれぞれの語形変化をする。現在形以外では、後者二つは同じ活用語尾を持つ。

● -ar なら
-o, -as, -a, -amos, -áis, -an
● -er なら
-o, -es, -e, -emos, -éis, -en
● -ir なら
-o, -es, -e, -imos, -ís, -en

-ar動詞: hablar(話す)
単数複数
1人称 hablo hablamos
2人称 hablas habláis
3人称 habla hablan
  -er動詞: leer(読む)
単数複数
1人称 leo leemos
2人称 lees leéis
3人称 lee leen
  -ir動詞: vivir(住む)
単数複数
1人称 vivo vivimos
2人称 vives vivís
3人称 vive viven

 訳読練習の時には、主語が語として表現されていない文でも動詞語尾から主語を読みとり、日本語としては不自然だが「~は/が、~する」と訳して、いつも主語を意識する必要がある。学習が進んで複雑な文章を理解するにはそれぞれの文で主語が誰かがわかっている必要がある。

    recoger(拾う)
単数複数
1人称 recojo recogemos
2人称 recoges recogéis
3人称 recoge recogen
   

 発音上は規則変化であるが、その規則的な音に合わせた綴り字にする必要のある動詞が存在する。例えば上に表で示した recoger(拾う)やdirigir(向ける)など不定詞が -ger, -gir で終わる動詞の直説法現在形1人称単数は、規則的な活用語尾 -o を付けるが g の綴り字のままだと go [go] となってしまう。そのため -jo の綴り字にする。直説法現在形では他に、 vencer(負かす): venzo, vences, vence..(co だと[ko]の発音), distinguir(区別する): distingo, distingues, distingue..(guo だと[gwo]の発音), delinquir(罪を犯す): delinco, delinques, delinque..(quoはスペイン語にない綴り。強いて発音すれば[kwo])などがある。他の時制・法での活用形でも同じく、発音上は規則変化であるが、綴り字を音に合わせなければならないものがある。


p.18

3-2 [直説法現在不規則変化 ser, estar, hay(=haber)]

ser(~である)
単数複数
1人称 soy     somos  
2人称 eres sois
3人称 es son
estar[所在・状態]
単数複数
1人称 estoy   estamos
2人称 estás estáis
3人称 está están
haber[有無]
主語が単数複数
1人称   -      -   
2人称   -      -
3人称 hay   -
ser (~である)
ser: A es B. A=B のように、AがBと同じであることを示す。数学の = とは違い、逆のBがAと同じとは言っていない。Bは、分類(国籍、出身地、所属団体…)、特性(形容詞の属性を持ったものとして分類)を表す。
 他に5-12で扱う時間表現で使われる。また、行事が「ある/行われる」という意味でも使われる。
 La fiesta es en casa de Carlos. パーティーはカルロスの家である(行われる)。
 La conferencia es a las cuatro de la tarde. 講演会は午後の4時だ(に始まる)。
estar (~にいる・ある、~である)[状態・所在]
1) 状態: A está B. でAの状態(他の時と対比して、発話時における形容詞の属性)、動作の結果を表す。
2) 所在: A está en C. でAがCにある(所在する)ことを示す。
hay ~ (~がある/いる)
動詞 haber の直説法現在3人称単数形。
 hay ~ における ~ は主語でないので ~ が単数でも複数でも動詞 hay は不変化。主語は表現されない。~ は主語でなく直接目的語である。~の名詞を代名詞に換えると直接目的格代名詞になる。
hay と estar
日本語では、同じ存在を表すのに「ある」と「いる」を区別している。「*庭に犬がある。」とか「*電話がテーブルの上にいる。」と言えない。スペイン語でも区別のしかたは異なるが、hay と estar は区別して使われる。
 有るか無いかを表現する時は、hay を使い、有る(いる)ことがわかっているものについて、その場所を表現する時に、estar を使う。
Hay un perro en el jardín. 庭に一匹の犬がいる。
El perro está cerca de un árbol. その犬は一本の木の近くにいる。

次の格言の意味を考えてみよう。
El tiempo es oro.
tiempo(m. 時、天候)、oro(m. 黄金)
No hay atajo sin trabajo.
atajo(m. 近道)、sin ~(~なしの・なしで)、trabajo(m. 労働)

p.20

3-3 [直説法現在語幹母音変化]

 語幹母音変化とは、語尾が変化するのとは他に、さらに語幹の部分の母音が、一部の活用形で二重母音になる、あるいは別の母音になる動詞である。
 まず、語尾変化については、規則変化と同じく、不定詞の語尾を見て、

● -ar なら
-o, -as, -a, -amos, -áis, -an となり、
● -er なら
-o, -es, -e, -emos, -éis, -en と、
● -ir なら
-o, -es, -e, -imos, -ís, -en となる。
次に、4つのグループごとにそれぞれ、主語が単数の時と3人称複数の時、母音が変化する。
● o が ue になる:
poder(~することができる), encontrar(見つける), dormir(眠る), acostar(寝かす), sonar(鳴る), probar(試す), doler(痛む), soler(よく~する), resolver(解決する), volver(戻る), llover(雨が降る)...
poder(~することができる)
単数複数
1人称 puedo    podemos 
2人称 puedes podéis
3人称 puede pueden
● e が ie になる:
querer(欲する), empezar(始める、始まる), sentir(感じる), cerrar(閉める), entender(理解する), pensar(思う)...
querer(欲する)
単数複数
1人称 quiero   queremos
2人称 quieres queréis
3人称 quiere quieren
● u が ue になる:
jugar(遊ぶ、プレーする).
jugar(遊ぶ)
単数複数
1人称 juego    jugamos 
2人称 juegas jugáis
3人称 juega juegan
● e が i になる:
pedir(頼む), seguir(続ける), reír(笑う)(reír は、アクセント符号に注意) ...
pedir(頼む)
単数複数
1人称 pido     pedimos 
2人称 pides pedís
3人称 pide piden
     reír(笑う)
単数複数
1人称 río     reímos 
2人称 ríes reís
3人称 ríe ríen

動詞3人称単数形で天気を表現する動詞で llover(雨が降る)、nevar(雪が降る)、tronar(雷が鳴る)は語幹母音変化動詞である。主語は特定されない。

Aquí llueve mucho en otoño.
aquí ここで、mucho たくさん、otoño 秋
En invierno nieva mucho en esta región.
invierno 冬、región 地方
Truena a lo lejos.
a lo lejos 遠くで・遠くに

次の文と諺の意味を考えてみよう。
Pienso, luego existo.
 フランスの哲学者ルネ・デカルト(René Descartes, 1596-1650)の言葉
El que ríe el último, ríe mejor.
 el que ~ する人、el último 最後(の者)、mejor より良く

p.22

3-4 [直説法現在1人称単数不規則変化]

poner(置く)
単数複数
1人称 pongo  ponemos 
2人称 pones  ponéis 
3人称 pone  ponen 
conocer(見知っている)
単数複数
1人称 conozco  conocemos 
2人称 conoces  conocéis 
3人称 conoce  conocen 
saber(知っている)
単数複数
1人称   sabemos 
2人称 sabes  sabéis 
3人称 sabe  saben 

直説法現在形で主語が「私」(=1人称単数)の時のみ特別な形で、1人称単数形以外の場合は、それぞれ不定詞の語尾-ar, -er, -ir に応じた規則変化をする。
 例えば上に表で掲げた poner だと、1人称単数が pongo で、他は -er動詞と同じ変化をする。
● caer(落ちる): caigo, hacer(する、作る): hago, poner(置く): pongo, salir(出る): salgo, traer(持ってくる): traigo, valer(~の価値がある): valgo,
● apetecer(欲しがらせる): apetezco, conocer(知っている): conozco, crecer(育つ): crezco, nacer(生まれる): nazco, parecer(思われる);parezco, reducir(減らす): reduzco,
● saber(知っている): sé, caber(入り得る): quepo
など。

1人称単数不規則変化で綴り字注意すべき動詞
● oír(聞こえる): oigo, oyes, oye, oímos, oís, oyen
● ver(見る、見える): veo, ves, ve, vemos, veis, ven
● dar(与える): doy, das, da, damos, dais, dan

動詞 hacer にはいくつかの用法がある。
● 「する」: hacer una fiesta(パーティーをする), hacer un examen(試験をする[行う、受ける]), hacer un pedido(注文をする), hacer señales(合図する)...
 Hacemos un viaje a México. 私たちはメキシコへ旅行をする。
● 「作る」: hacer té(お茶を入れる), hacer cola(列を作る), hacer una silla(椅子を作る)
 Hago ensalada para la cena. 私は夕食のためにサラダを作る。
● (3人称単数で)天気、天候
 Hace buen tiempo. 良い天気です。 Hace calor. 暑いです。
● Hace --- que ~.「~して---の期間が経つ」
 Hace ocho años que vivimos en esta casa. この家に住んで8年になる。
この文が答となる疑問文は、期間の部分をcuánto tiempoにして、文頭に持ってくるため、残りの hace とque以下がその後ろにくる。
 ¿Cuánto tiempo hace que viven ustedes en esta casa? あなた方がこの家に住んでどれくらいになりますか。
● 「---を~にする」
 La tecnología hace más cómoda la vida / hace la vida más cómoda. 技術は生活をより快適にする。

次の格言の意味を考えてみよう。
El ejercicio hace al maestro.
hacer はここでは「作る」の意味。maestro は「名人」といった意味で使われている。
(“al” が無い形や El ejercicio hace maestro al novicio. などのバリエーションがある。)
El saber no ocupa lugar.
saber は「知る、知っている」という意味の動詞だがここでは「知っていること、知識」という名詞として使われている。ocuparは「占める」の意味の規則変化動詞。lugar「場所」。
Querer es poder.
querer も poder も動詞ではあるが、ここでは「欲すること」と「できるということ」の名詞として使われている

p.24

3-5 [直説法現在不規則変化 ir, tener, venir, decir]

ir(行く)
単数複数
1人称  voy  vamos
2人称  vas  vais
3人称  va  van
     tener(持つ)
単数複数
1人称  tengo  tenemos 
2人称  tienes  tenéis
3人称  tiene  tienen
動詞 ir : voy, vas, va, vamos, vais, van
● ir a場所 (en乗り物) : (~で)~へ行く
● ir a不定詞 : ~するつもりだ(近い未来)
● vamos a不定詞 : さあ~しよう(誘いかけ、呼び掛け)
動詞 tener : tengo, tienes, tiene, tenemos, tenéis, tienen
● 「持っている」 (抽象的な意味でも使う)
 ¿Tienen una habitación libre? 空き部屋ありますか。
● tener que + 不定詞: 「~しなければならない」
 Tienes que salir ahora mismo. 君は今すぐ出発しなければならない。
● 暑さ寒さ
 Tengo mucho calor. 私はとても暑い。
● 年齢
 Tengo dieciocho años. 私は18才です。

問題I.は、テレビアニメ『母をたずねて三千里』、スペイン語版: Marco, de los Apeninos a los Andes(マルコ、アペニン山脈からアンデス山脈へ)に出てくるエピソードを改変・簡略化したもの。原作はエドモンド・デ・アミーチス(Edmondo De Amicis, 1846 - 1908)の小説『クオレ』(Cuore. 1886. スペイン語版 Corazón)

問題II.で、bola de arroz は「おにぎり」。厳密には、bola de arroz cocido.
きび団子なら、bola de mijo、厳密には、bola de harina de mijo cocida とでもなるだろう。
犬(perro)と猿(mono)と雉(キジ)(faisán)は、固有名詞扱いして、語頭を大文字で表記した。

venir(来る)
単数複数
1人称  vengo  venimos
2人称  vienes  venís
3人称  viene  vienen
     decir(言う)
単数複数
1人称  digo  decimos 
2人称  dices  decís
3人称  dice  dicen
動詞 venir(来る): vengo, vienes, viene, venimos, venís, vienen
 ¿Por qué no vienes? 来ないかい?
 Ella también puede venir. 彼女も来ることができる。
動詞 decir(言う): digo, dices, dice, decimos, decís, dicen
● que の後に伝達の内容を表す。
 Teresa dice que viene a la fiesta de Luis. テレサはルイスのパーティーに来ると言っている。
● 3人称複数形で主語を特定しないで、「~だそうです」
 Dicen que va a llover mañana.  明日雨が降るそうです。

p.26

3-6 [間接目的格代名詞をともなう動詞]

感情、感覚の経験者を主語で表す動詞と間接目的格で表す動詞がある。

1) 感情、感覚の経験者を主語で表す動詞
querer(欲する), desear(望む), preferir(より好む), tener dolor(痛みを感じる) など
2) 間接目的語で表す動詞
gustar(好かれる), parecer(思われる), apetecer(欲しがらせる), doler(痛む), faltar(足りない), interesar(興味を持たせる)など。この[3-6]は、これらの動詞の練習問題である。
● これらの動詞を使う時は、感情、感覚の経験者の「私」「あなた」「彼(女)、あなた」「私たち」「あなたたち」「彼(女)たち、あなた方」を間接目的語 me, te, le, nos, os, les で表しこれらを動詞の直前におく。
 感情、感覚の経験者を固有名詞や名詞で表現する時は、le, les を動詞の直前に置くのに加えて、前置詞 a の後につけて表される。a + (固有)名詞は、普通文頭だが、後の方でも可能。
 A mis padres les gusta mucho viajar. / Les gusta mucho viajar a mis padres.  私の両親は旅行するのが大変好きです。
● 感情、感覚の対象(次の例文の la música と los toros は主語なので動詞はこれに一致させる。普通はこれら感情、感覚の対象が動詞の後ろに置かれる。
 Me gusta la música. 私は音楽が好きです。
 No le gustan los toros. 彼(女)は闘牛が好きではありません。

p.27 [III](4)
 Hispanoamérica は、南北アメリカ諸国のうち、スペイン語を公用語としている国々を意味する。Latinoamérica(ラテンアメリカ)、Iberoamérica(イベロアメリカ)と区別した用語である。Latinoamérica はラテン語起源の言語、すなわちスペイン語、ポルトガル語、フランス語を公用語とする南北アメリカ諸国を意味し、ブラジルやハイチを含む。Iberoamérica は、イベリア半島起源のスペイン語・ポルトガル語を公用語とする南北アメリカ諸国で、ブラジルも含む。

 Hispanoamérica を和訳すると「スペイン語圏アメリカ」とでもなるだろう。カタカナで「イスパノアメリカ」としたり、「スペイン系アメリカ」としたスペイン語日本語辞典もある。
 日本語の「アメリカ」という語は、アメリカ合衆国の意味が強いので、南北アメリカを意味するスペイン語の América(s) およびこれを含む語の和訳が難しい。アメリカ合衆国内のhispanic「スペイン語系」「ヒスパニック」との区別も必要である。
 スペイン語の hispano もスペイン王立学士院の辞書によると、(1)現在のスペイン、ポルトガルを含むローマ時代の Hispania の形容詞・名詞であり、(2)またスペイン語の形容詞形、スペイン語圏アメリカ諸国の形容詞形でもある。(3)それにアメリカ合衆国内の「ヒスパニック」の意味も持っている。


2020/9/2. © 2020 HOTTA Hideo